短編小説 パラレルワールド~夢世界~(1)

目が覚めたらそこは森の中だった。木が鬱葱と生い茂っているそこは宛らワンダーランドのようにも思えた。僕は体を起こし辺りを見回した。周囲には木しかなく、僕はゆっくり立って歩を進めた。森の端まで来ると眼下には街が見えその先に港があった。港の先には広大な海も見えとても綺麗な所だと思った。僕はその景色を目の前にしてゆっくりと大きく深呼吸をした。街に降りてみようと僕は辺りを見回し森の中腹ぐらいのところにあった細道を下った。街は森とは打って変わってとても華やかで賑やかであった。見るものすべてが珍しく、僕はきょろきょろとあたりを見物しながら歩いて行った。多くの店が所狭しと軒を連ね、一軒一軒がこれまた所狭しとものを陳列し、店主や女将さんがものを勧める。どれも、どの光景も僕の国では見たことのないものだった。初めて見るものであふれかえっているこの街は僕にとって御伽噺の中にでも迷い込んだかのような感覚だった。街の人が着ているものも今の僕の国では見ない服装だった。僕の国では今は皆洋服を着用している。が、ここの人たちは和服だ。甚平や袴の人もいるが大体が和装で統一されている。だが、街のつくりは洋風で綺麗なレンガ造りの家などもある。少しちぐはぐな感じに気を取られていると一軒の店が見えた。そこは洋食喫茶「シャノワール」と書かれた看板のお店だった。お腹の空いていた僕はそのお店に入った。     つづく